あらすじ
転校生の准一は、クラスのざわめきの中に居場所を見つけられずにいた。
誰とも深く関われず、昼休みも放課後も、世界の端に立っているような日々。
そんなある日、快活な少年・浩二が声をかけてくる。
彼の自然な笑顔とまっすぐなまなざしに、准一は初めて「世界に触れた」気がした。
だが、少しずつ心を開いていく中で、准一は次第に気づく。
浩二の優しさの中に、自分には届かない光があることを。
母の台所に置かれた蜂蜜の瓶——その黄金色の甘さは、やがて彼にとって“癒し”ではなく、“苦さ”の象徴となっていく。
運動会の陽射しの下、走ることのできない准一の胸に沈む思い。
それは、友への憧れであり、世界から取り残される予感でもあった。
そして、季節の終わり、蜂蜜が消えた朝——少年は静かに、自分の中の痛みと向き合う。
『蜂蜜』は、誰の心にもある“届かない優しさ”を描く、静謐で切ない青春小説である。