あらすじ
キャッシュレス時代の現代。
財布の底で忘れられた一円玉――通称イチは、ある日、他の硬貨たちとともに“通貨の墓場”と呼ばれるタッパーに閉じ込められる。五百円玉をリーダーに、十円・百円・五十円らが嘆くなか、イチは「もう一度人の役に立ちたい」と立ち上がる。名もない金属の反乱、「オペレーション・ラストチャリン」が始動した。
夜中にタッパーを揺らし、転げ落ちてフタを開ける作戦は見事成功。小学生のミユちゃんに拾われたイチは、翌日の募金に使われることになる。募金箱の中で“チャリン”と鳴ったその一瞬、イチは自分の存在の意味を知る――「価値とは数字じゃない」。
やがて五百円玉もその後を追い、ふたりは同じ募金箱の中で再会する。
時代が電子化しても、“手から手へ”渡る一円には、確かに温もりが残っている。
それは、世界をほんの少しだけ優しく変える、小さな音――チャリン。
小さな金属の命が教えてくれる、やさしくてコミカルな“通貨寓話”。