あらすじ

樹上の囲いの内側で暮らすナマケモノのぼくは、ガラスの向こうの砂地を走るチーターに恋をする。音より先に変わる空気、跳ねて戻る砂粒、柵の縞。ぼくは遅い身体で枝に指を掛けたまま、滴と呼吸を一致させ、給餌札の数字や足跡の輪郭をたよりに、彼女の速さを測ろうとする。だが合うのは間だけで、速度は決して重ならない。 二章、霧とミストの朝、落ちる水と歩く周期、くり返し現れては消える輪。ぼくは覚えることでしか近づけないと知り、影の星座を胸に刻む。三章、開く箱、短い合図、切れて戻らない影、最速の別れ。砂上に浅く残る足跡の崩れを見届け、ぼくは離すにも時間を要する自分の速さを学ぶ。 最後の章、向こう側は空区画となり、等間隔の縞だけが時間を作る。待つために鍛えた筋肉を、待たないために使い直し、滴の手前の無音に呼吸を置き直す。愛は彼女の出発の瞬間に終わり、ぼくの内では遅れて終わる。世界の速さと自分の速さが一致しないまま、それでもちょうどの速さを見いだすに至るまでの、時間感覚のずれで描く失恋の物語。

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エブリスタ
エブリスタ2025/10/31
  • 現在の作品ちょうどの速さ