あらすじ
“転生”――それは、現代における最大の希望だった。
SNSでは「普通の人生をやり直せる」「何度でも人生を選べる」といった言葉が飛び交い、ライトノベル・アニメ・漫画では連日“異世界転生”“チート能力”ものが量産されていた。
そんな“転生モノ”がリアルに制度化された時代。
国家は「死後の人生を保証する」と宣言し、バイオクローンと脳意識転写サービスを社会インフラとして整備した。
大学を卒業したばかりの青年・ 東條獅堂 は、夢を抱いてその制度の裏側に飛び込む。
厚生労働省/防衛省の合同機関、 転生庁 への推薦を受け、
「転生事業で、人の“次”を守る仕事がしたい」と胸を膨らませながら就職する。
だが就職初日――。
“面談”だと思われたその場で、彼は拘束される。
告げられたのは、
「君こそが、この国家が欲した“複合転写体”の成功例である」という残酷な真実。
実は、彼の脳には類稀な戦闘能力を持つ特殊作戦群隊員の戦闘技能、戦地において数百人を救った衛生軍医の外科処置技能、高精度な観察眼を持つ公安心理分析官の尋問・観察技能などの複数の技能データが重複保存されており、国家はその解析と転用を目論んでいた。
さらに彼が知らぬ間に動き出していたのは――
国家の倫理を監視する組織、 倫理観察庁。
その特殊部隊 “HOUND” が、秘密裏に彼を奪還に動く。
報道では「倫理庁の協力で救出された英雄」の物語として宣伝され、
国民はまた一つ“転生を祝福する物語”を受け入れる。
しかし、獅堂自身の目には、
“希望”の裏に隠された“倫理なき再生”が映っていた。
転生とは救いか。
それとも、国家が作り出した罰か。
科学と信仰、制度と人間性が交錯する世界で、
彼は「人間であること」の意味を問い直す旅に出る。