あらすじ
2075年、感情が数値で管理される都市で、
ひとりの少女が「異常値」として選ばれた。
彼女を見つめるのは、ただ事実を記録する“観察者”。
心拍、呼吸、発話、ストレススコア――
冷たい数字の向こうで、少女は笑い、泣き、恋をする。
監視された社会で、彼女はたった一人の少年を守り続ける。
そして死後、少年は彼女の記録をもとに
ホログラム《echo01》を生み出す。
全19章。
それは報告書であり、祈りであり、
「観測」と「愛」のあいだに生まれた、
人間の証明の物語
以下ネタバレ含
2075年、すべての感情が数値化された監視都市A。
人間は「感情データ」として国家に管理され、幸福や怒り、愛情までもがスコア化されていた。社会は完全な秩序を手に入れたが、その裏で“異常値”を示す人々は静かに排除されていった。
物語の中心にいるのは、何の特別な才能もない17歳の少女。ある日、彼女は国家の選抜システムにより、特別任務の対象として選ばれる。彼女を記録し監視するのは「観察者」と呼ばれる存在――この物語の語り手であり、冷徹な報告を淡々と続ける第三者である。観察者は少女の心拍、呼吸、発話の間、ストレススコアを正確に記録し続ける。だが報告の行間には、わずかな違和感が生まれていく。
少女はテロの渦中で出会った少年を守るため、危険な任務に身を投じる。5年という歳月の中で、ふたりは言葉にならない絆を育み、禁じられた「感情」を共有していく。愛を認めればシステムが崩壊する世界で、ふたりは“観測不能な感情”を選んだ。
やがて少女は命を落とし、残された少年は彼女を模したホログラム《echo01》を創造する。狂気と優しさが同居するそのAIの誕生は、社会の枠組みを静かに侵食していく。
観察者はそれをも記録し続けるが、最終章でひとつの告白をする――「私は、彼女の“友人”だったのだ」と。
その瞬間、無機質な報告書は祈りへと変わり、記録はひとりの人間の声になる。