あらすじ
ツミター・テル。
かつて、借金五百万のただの会社員だった。
投資に失敗し、人生に敗れ、線路の光に身を投げた――
それが、俺の“終わり”であり“始まり”だった。
目を開けると、そこは異世界《グラン・バリス》。
小さな体と荒れた指先。
薬草工場で瓶の栓を締めるだけの少年として、再び生き直していた。
それでも働き、節約し、投資を続け、
やがて俺は二億五千万Gを築き上げた。
そして――働く理由を失った。
富も自由も手に入れたのに、心だけが空っぽだった。
そんなある日、古書店で一冊の論文に出会う。
『リグレス理論 ― 退行を通じた母性エネルギーの循環』。
著者は帝都アカデメイアの研究者・リュミエール。
“サキュバス族は、他者を抱きしめることで心を再生させる。”
その一文に、凍っていた心が音を立てて割れた。
俺はすぐに彼女へ連絡を取った。
そして、自らを実験体として差し出した。
「あなたの資産を“癒しの流動資本”に転換します。
わたしたちはそれを“母性配当”と呼んでいます。」
資金の一部は施術に使われ、サキュバスたちに報酬が支払われる。
だが複利のように癒しは増え、資産も減らない。
――心と富、どちらも回り続ける。
リュミエールの腕に抱かれ、俺は赤子の姿へと還った。
ミルクの匂い。温かな指。
「てるちゃん、よしよし……もう頑張らなくていいのよ。」
その声に包まれながら、涙がこぼれた。
それは悲しみではなく、再生の涙だった。
この“癒しの仕組み”はやがて帝国を変えた。
「バブファイヤ基金」「母性再分配法」。
涙が経済を回し、戦費より多くの命を救った。
リュミエールは微笑む。
「てるちゃん。あなたの涙が、この世界を変えたのよ。」
――泣くことは、無駄じゃなかった。
心の複利は、ちゃんと回ってる。
涙が資本になり、癒しが複利で広がる。
そんな“新しい再生ファンタジー”。
それが――《バブファイヤ》。