あらすじ
むかし、貧乏長屋に一人の男がいた。
怠け者というほどでもないが、かといって働き者でもない。賭け事にのめり込むでもなく、酒に溺れていたわけでもないが、金とは縁が遠いようで、質素な暮らしを細々と続けていた。つまり、要領が悪かったのである。
ある晩のこと。
男はふと目を覚ました。胸の奥あたりが、すうっと冷えていくような妙な気配がしたのだ。そして、それは気のせいではなかった。
幽霊が布団の脇に座り、男を覗き込んでいたのである。
男は息を呑み、布団をぎゅっと握りしめた。声を上げようにも喉が凍りついたように動かず、口をパクパクさせるばかり。すると、幽霊のほうも驚いたように目を見開いた。
『あんた……もしかして、私が見えるのかい?』