あらすじ
私に出来る事は…ただ一つだけ。
冰月(ひづき)は冬の深まる日、臥御尾(ふしおび)大学付属高校で日常を過ごしていた。
否、少しの非日常が混ざっていた。
人生の中の新たな出会いを果たしたからだ。
その夜、夢をみた。
自分が住む世界とはまったく違う世界の夢。昔の日本の様な場所。
そして、いつもとは明らかに異なる自分の姿。
呆然と座り込む冰月だったが、自分を呼ぶ声を聞き歩き出す。
真っ赤な鳥居と真っ白の狐。
「最初に言っておかねばならぬのは、これは夢なく現実なのだよ。冰月」
真っ白な狐は、冰月に助けを乞うた。
「二つの世界の為、我の九つの尾のうちの七つを集めてくれ。この六人と共に」
彼の指す方に居るのは、一様に青ざめた六人の男性達
だった。
私の知っている人達が、異なる雰囲気を持ってそこにいたのだ。
同じ過去を共有する幼なじみ
他のクラスの明るい男の子
一年生の金髪が良く似合う不良生徒
他校生のお兄さんの様な同級生
大学4年生なのにどこか幼さを持った人
飄々とした大学図書館の司書さん
魂が集っていた。
現実の魂と異世界の魂が混在していたのだ。
本来知るはずのない、異世界の記憶を、現実の記憶を知ってしまった。
運命は狂いだす。
知ってしまった過去はどれも、現実では体験したことのない辛いものばたり。ある者は狂い、ある者は堕ち、ある者は染まっていく。
そんな六人と過ごす内に冰月は、恋に落ち、落とされていく。
「そ奴らを助けたいか?」
狐は囁く。
「ならば、冰月……」
狐は甘く囁く。
恋は薄氷の如く。