あらすじ

「君、サボり? 入学式に遅刻なんて大胆ね」  不意にかけられた声に、思わず顔を上げた。  校門の外、桜並木の下に立っていたのは、見知らぬ少女だった。  春の柔らかい日差しを受けて、彼女の茶色の髪は金色に光って見える。  そして、少し青みがかった瞳――まるで空の色を閉じ込めたみたいに綺麗だった。 「……別に、サボってるわけじゃないよ。ただ、人が多くて、入るタイミングを逃しただけ」  そう言うと、少女は小さく笑った。  桜の花びらが風に舞い、彼女の肩にひとひら落ちる。  それを指先で払う仕草まで、なぜだか印象に残った。 「じゃあ、逃げ遅れたわけだ。私も同罪ね」 「え?」 「私も遅刻したの。だから、ちょっとだけ仲間」  そう言って彼女は桜の木の下に腰を下ろした。  白い靴が、花びらを踏んで淡く染まっていく。  春の匂いと、彼女の笑顔が、胸の奥に残った。

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カクヨム
カクヨム2025/10/27
  • 現在の作品あの日、桜の木の下で