あらすじ
「君、サボり? 入学式に遅刻なんて大胆ね」
不意にかけられた声に、思わず顔を上げた。
校門の外、桜並木の下に立っていたのは、見知らぬ少女だった。
春の柔らかい日差しを受けて、彼女の茶色の髪は金色に光って見える。
そして、少し青みがかった瞳――まるで空の色を閉じ込めたみたいに綺麗だった。
「……別に、サボってるわけじゃないよ。ただ、人が多くて、入るタイミングを逃しただけ」
そう言うと、少女は小さく笑った。
桜の花びらが風に舞い、彼女の肩にひとひら落ちる。
それを指先で払う仕草まで、なぜだか印象に残った。
「じゃあ、逃げ遅れたわけだ。私も同罪ね」
「え?」
「私も遅刻したの。だから、ちょっとだけ仲間」
そう言って彼女は桜の木の下に腰を下ろした。
白い靴が、花びらを踏んで淡く染まっていく。
春の匂いと、彼女の笑顔が、胸の奥に残った。