あらすじ
孤独な少女・ユイは、夜の窓辺で一羽の黒いカラスと出会う。名はクロウ。彼は人の心の「夜の声」を聞く存在だった。ユイがふと漏らした「寂しい」という言葉に導かれ、クロウは彼女のもとに現れる。言葉を交わすうち、ユイは夜の静けさの中に自分の心の形を見いだしていく。
クロウは言う――「夜は、昼に傷ついた声を磨く場所だ」。
ユイはその言葉に救われながら、学校での孤立や不安、友人ミサキとのすれ違いを少しずつ乗り越えていく。雨の日、クロウに背中を押されて差し出した一本の傘が、彼女の世界を静かに変えた。やがてユイは、夜に“待つ”だけの存在から、誰かの心に灯をともす側へと成長していく。
一方で、クロウにも過去があった。かつて守れなかった少女への記憶――“だいじょうぶ”という言葉を残して消えた声。その後悔が、彼を夜の使者にした。ユイと出会い、彼はようやく「届かなかった声にも意味がある」と知る。
そして朝。
ユイはクロウとともに夜明けを迎える。
消えていく黒い翼の代わりに、胸の中に小さな羽が残った。
それは“夜を持ち運ぶ力”の象徴――名まえ、順番、余白。
ユイはもうひとりではない。夜も、クロウも、心の中に生きている。
「夜は、消えない。」
その言葉をノートに記し、ユイは新しい朝を見上げる。
月光の中で出会ったカラスは、今も静かに、彼女の影の中で羽を休めている。