あらすじ
前線の廃墟で恋人の遺骸を抱える青年兵ゼル。
彼は喪失を抱えながらも愛の名のもとに彼女の骨を持ち帰り、やがて飢えと孤独の果てにそれを口にする。
《埋める代わりに、少しだけ、食べた》
その行為は狂気そのものであったが、どこか神秘的で祈りのように静かだった。
その傍らには、かつて彼を救おうとした戦友であり記録者であるリアンがいた。
だが、その慰めの言葉は次第に冒涜へと変わっていくことに彼は気づいた。善に酔っていた、そして己の慰めがいかに残虐な行為であるかを。
戦禍にあえぐ避難民キャンプ。赦しと罪、救済と逃避の境界が崩れる中、青年は再び戦場へ戻り、戦友は沈黙を選んだ。
贖罪と狂気の果てに、彼は自らの肉を喰らいながら失われた恋人の声へと還る。そこに遺された言葉「彼女は、俺を赦した。だから俺は、もう存在しない」
救済は成就したのか、あるいは寂滅だったのか。誰にもわからぬまま、記録だけが残された。