あらすじ
千代田区に本社のある舞台照明会社の二十歳の見習いの心地(しんじ)はある時、社を訪れた若い女性、石田加奈と出会う。彼女は富山から出てきて見合いをしにきたという。
相手は五十がらみの巨漢の照明チーフ西川であると分かった。なぜ彼女が若いのに初対面の年齢差も離れた見合い結婚をしなければならないのか。そこには複雑な彼女の生い立ちがあった。怪訝に思いながらも所長のオヤジに命じられて東京滞在中、彼女と西川さんの彼女の面倒をみることになり、毎日大塚の下宿から日比谷の劇場の現場まで一緒に歩いて通勤することになる。
やがて二人はともに共通の「天文の趣味」があることがわかり、心地はこの通勤で通る駿河台御茶ノ水橋のエリアには300年前、江戸時代の有名な天文学者、渋川春海が自宅に開いた江戸二番目の天文台があったことを伝える。この駿河台を通るたび天文の観測とともに二人の仲は急速に近くなっていく。
だが西川と石田の婚姻儀式と富山への帰郷の時は迫っていた。心地はやがて思いを伝える決意をすることになる。だがそれは受け入れられない。最後に心地石田の好んだある曲のレコードを秋葉原で購入する。それが二人にささやかな奇跡をおこすことになる。