あらすじ

月齢に合わせ、人類が記憶を失う時代。満月の夜に最も鮮明だった記憶は、月が欠けるごとに薄れ、新月になると完全にリセットされる。高校生の柊真は、その世界の中で日記を頼りに生きていた。自分の名前、家族、そして恋人・瑠璃――すべては文字で繋がる記憶のかけら。新月を迎えるたびに彼らは互いを忘れ、日記を読み返して恋人同士に戻る。  だが、月の満ち欠けが進むうち、二人の記憶は少しずつ食い違い始めた。前回の満月に見た映画すら、瑠璃の記憶では「公園の夜」になっている。やがて真は知る。月は人間の記憶を消しているのではなく、世界のすべての「可能性」を蓄え、各人に異なる過去を返しているのだと。  つまり、彼と彼女は同じ時間を生きていない。それでも彼らは、同じ現実を取り戻そうと日記の内容を一致させ、互いの記憶を照らし合わせながら過ごす。しかし、細部はどうしても揃わない。服の色、言葉の温度、感じた永遠――どれも少しずつずれている。真は悟る。「人は完全に同じ記憶を分かち合えない。だからこそ、恋は意味を持つ」。  二人は日記を統一することをやめ、それぞれの世界で相手を愛し続ける道を選ぶ。記憶が違っても、愛は存在する。新月の度にすべてを忘れ、三日月と共に彼女に恋をし直す――それが彼らの「リュナ・リセット」。満月の光の下、瑠璃が呟く。「恋って、記憶じゃないんだね」。真は微笑む。「今、君を愛してる。それだけでいい」。月が欠けても、彼らは何度でも出会い直す。記憶を失うたび、世界でいちばん初めての恋を繰り返す。

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エブリスタ
エブリスタ2025/10/27
  • 現在の作品リュナ・リセット——月が記憶を消す前に