あらすじ

2087年、月が突如として夜空から消えた。原因は不明。世界は「月のない夜」に慣れたが、青年・渚蒼だけは、何か大切なものを失った感覚を拭えずにいた。三年後の同じ夜、蒼は河川敷で光を放つ少女を見つける。彼女は記憶をなくし、自らを「ツキヨ」と名乗った。肌は淡く光り、月明かりのように冷たい。蒼は保護し、奇妙な同居生活が始まる。食事も睡眠もほとんど取らず、ただ夜ごと空を見上げるツキヨ。「月が消えた日から、私の記憶もない」と語る彼女の存在は、やがて蒼の孤独を満たしていく。「もし私が人間じゃなかったら?」と問うツキヨに、蒼は答える。「それでも君は君だ」。その言葉にツキヨの目から光の涙が零れた。  やがて彼女の体に異変が起き、内側から強い光を放ちはじめる。「月が私を呼んでる」。彼女は宙へ浮かび、蒼の腕の中で溶けるように輝いた。彼の告白と共に、ツキヨは夜空に還る。翌瞬、空に白い光が生まれる――三年ぶりの月だった。ツキヨは再び蒼の腕の中に現れ、告げる。「私は月の欠片。月の記憶が人の形になったの」。だが今、彼女の涙は人間のものだった。  それから三年。ツキヨは正式に人間として生き始め、満月の夜にはわずかに肌が光る。蒼と彼女は恋人として静かな日々を過ごす。月を失った夜に出会い、月が戻った夜に結ばれた二人。蒼の言葉は今も変わらない――「月が消えても、君は君だから」。ツキヨは微笑む。「拾ってくれて、ありがとう」。月が優しく二人を照らしていた。

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エブリスタ
エブリスタ2025/10/27
  • 現在の作品月を失った夜に、君を拾う