あらすじ
『恥の多い生涯を送って来ました』 ……などと、本物の破滅を知る文豪のような言葉を、私が口にする資格はない。
私(40歳・工場アルバイト)は、「いつかビッグになる」と嘯(うそぶ)くだけの、小説一つ書き上げられない男だった。 あの日、鉄骨の下敷きになった時ですら、私はデビューした仲間の作品のアラを探していたのだ。
そんな私が、異世界に転移した。 キタ。これで「主人公」になれる。
だが、甘かった。 そこは「魔法」ではなく「難解な異世界物理学」が支配する、冷たい宇宙(そら)だった。 私に与えられたスキルは【批評】——他人の魔法(物理法則)のアラを見抜けるが、自分では一切使えない、口先だけの能力。
ああ、日本(あそこ)と同じではないか。
私は絶望し、プライドを打ち砕かれ、日々のパンのために汚泥にまみれた。 ……いや、それもほんの数日のことだ。
私は逃げた。努力から。現実から。 そして、私はこの【批評】という口先だけのスキルと、中途半端な日本の知識(知恵)を武器に、成り上がった。 そう、「賢者」として。
全ては順調だった。私が口を開けば、世界が動いた。 私は英雄になれる、はずだった。 あの日、私の「嘘」が剥がれ落ちるまでは——。
これは、英雄にも賢者にも、ましてや破滅(人間失格)にすらなれなかった、 中途半端な男の、みっともない「独白」である。