あらすじ
パラレルワールド観測装置「ルナスコープ」を使って、主人公の「僕」は別の世界線を覗き見る。月の反射光を利用して「もしも」の世界を映すその装置は、父が開発した未公開の実験機器だった。ある夜、モニターに映ったのは「僕が彼女に告白しなかった世界」。そこでは白鳥美月が別の男子と幸せそうに笑っていた。その光景に胸を締めつけられながらも、目を離せない僕。しかし、美月が突然画面越しにこちらを見て「助けて」と口を動かす。
翌日会った彼女は何も覚えていないが、僕の中では奇妙な違和感が残る。装置を再び起動すると、「僕のいない世界」では美月が孤独に窓の外を見つめていた。矛盾する世界線、呼びかける美月――何かが狂い始めていた。
やがて僕は、装置の禁断機能「観測者逆転モード」で世界線へ干渉しようとする。だが因果律が崩れかけ、美月から「もう使わないで」と懇願される。それでも世界の境界は揺らぎ、彼女の中にも別の記憶の影が差す。そんな中、美月は月を見上げて言う。「月はすべての世界線を見て、記憶しているのかも」。その言葉が核心だった。月光はあらゆる世界を照らし、記憶をつなぐ。「全世界線統合モード」を発動した僕は、無数の世界の美月を目撃する。笑う美月、泣く美月――そして、存在しない世界では孤独な自分だけが月を見上げていた。どの世界線でも、二人はお互いを必要としているのだと悟る。
その夜、美月が僕を呼ぶ。「私も見たの。別の世界線を」――月の光の中で、彼女は語る。装置がなくても、月そのものが全ての世界を繋いでいるのだと。そして言う。「私たちはどの世界線でも惹かれ合う運命なんだよ」。月明かりの下、二人は手を取り合い、誓う。この世界線で一緒に生きていくと。月は静かに輝き、無数の世界を越えて二人を照らしていた。