あらすじ
美容師・瑞希は、街の片隅にあるサロン〈Luna hair〉で働く30代のスタイリスト。日々の相手は、髪よりも“でも”の多いお客たちだ。
「おまかせで、でも伸ばしてる途中」「前髪は三ミリで、でも眉は見せたくない」「初回クーポンで来たけど常連扱いで」——瑞希は微笑みながら、矛盾と希望を同時にカットしていく。
予約アプリの無断キャンセル、終わらないクーポン巡礼、三度のブリーチで人生ごと色を抜こうとする若者。鏡の前では毎日、小さな喜びと嘆きが繰り返される。
「似合わせ」という魔法を信じ、「似合ってたけど違う」と言われる現実にため息をつきながらも、瑞希ははさみを動かす。
彼女の指先には、色褪せない誇りとほんの少しの疲労。
それでも、誰かが笑顔で「ありがとう」と言うたび、もう一度だけ魔法を信じる。
美容師たちの矛盾とユーモアを描く、笑えて少し切ないお仕事風刺コメディ。