あらすじ
辺境の小さな分院で、黙々と働く一人の聖女・リディア。
宮廷の聖女として召し出されたものの、華やかな貴族社会には馴染めず、冷たい皇帝の「よく働け」というたった一言を胸に、静かな田舎へと派遣された。
けれど、地味で平凡な毎日が、彼女には不思議と心地よかった。
泥にまみれて薬草を摘み、笑う村人たちに囲まれて――それが、自分に似合う幸せだと思っていたのに。
ある日、帝都から届いたのは、あの皇帝陛下直筆の書状。
「健康を損なわぬように」と、たったそれだけ。
それでも、胸の奥に灯るのは温かな光。
寵愛されていない。
名前を呼ばれることも、抱きしめられることもない。
それでも、彼の言葉一つで、世界が輝いて見える。
やがて再び帝都へ呼び戻されたリディアは、冷徹だと噂される陛下の本当の姿に触れていく。
“寵愛”とは、特別な待遇でも、豪奢な贈り物でもなく――
互いの心を、静かに見つめ合うこと。
寵愛されなくても、構わない。
ただ、あの人が笑ってくれるなら。