あらすじ
「この世界は舞台であり、誰もが配役を与えられている。
だが、私だけは“台本”を書く側なの。」
人気若手女優・斎藤瑠奈(さいとう・るな)。
その演技は“神懸かり”と評され、観客の心を焼き尽くすほどの圧を持っていた。
だが彼女は、演技に必要な“感情”を感じていない。
彼女にとって感情とは、観察し、模倣し、再現するデータに過ぎなかった。
ある日、彼女の出演する舞台《告白の夜》が上演される。
その内容――“罪を告白した恋人が、空へ落ちていく”。
そして、その夜、現実で彼女の恋人がベランダから転落死した。
事件現場に残されたのは、まだ発表前の《告白の夜》の脚本の一節。
警視庁捜査一課の刑事・曲輪京介(くるわ・きょうすけ)は、
事件を調べるうちに瑠奈の過去に不審な痕跡を見つける。
彼女が出演した舞台では、必ず誰かが死んでいるのだ。
彼女は演じていたのか、それとも現実を演出していたのか。
彼女が信じる「脚本家」とは誰なのか。
そして、彼女の脳内に広がる“心の劇場”では、
今も観客のいない舞台が静かに照らされている。
やがて、刑事と女優、脚本家と観客、そして現実と虚構が入り乱れ、
世界そのものが一つの“演劇装置”に変わっていく。
"幕は下りない。
彼女の舞台が、まだ終わらないからだ"