あらすじ

彼の救いは、彼女の恐怖だった。 正義は、いつも誰かを傷つけている。 ──私はあの夜、人を生かしてしまった。 そして、その人に最大の恐怖を与えてしまった。 物語は、医師・緒方の手記から始まる。 取り調べ室と留置所を行き来しながら、彼は自分の行為を「救い」と呼ぶか「犯罪」と呼ぶか、言葉の境界で迷い続けている。 緒方は、昔から「正しくありたい」と願う人間だった。 中学では教師に反抗し、高校では理想を演じ続ける同級生たちの中で、 自分にだけ“役”がないことを恐れた。 誰かに必要とされたい。その渇きが、やがて他人を救おうとする衝動に変わっていく。 医師になった彼は、ある日、自殺未遂の女性・美月と出会う。 彼女を救った瞬間、緒方は思う。 「自分はまだ間に合った」と。 だがその信念は、いつしか“治療”から“支配”へと変わっていく。 美月を守ろうとするたび、彼女の自由を奪っていく。 生かすことが救いではなく、恐怖へと変わる。 そして、取り返しのつかない夜が訪れる。 彼は法の前に立たされ、「医師としての責任」を問われる。 だが、緒方が向き合っているのは法ではなく、自らの“善意”そのものだった。 ──救いはいつも、誰かの痛みの上に成り立つ。 『救済の余暇』は、優しさの裏に潜む支配と、正しさの名を借りた暴力を描く。 人を助けることは、ほんとうにその人を救うことなのか。 それとも、自分を生かすための祈りなのか。

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小説を読もう2025/10/24
  • 現在の作品救済の余暇