あらすじ
若くして未亡人となった桧山彩芽は、悲しみに暮れる毎日を送っていた。
遺されたのは、夫が亡くなる前に買った、新築マンションの一室。
……死んだように過ごしていたある日、隣に新しい家族が引っ越してくる。
可愛らしい男の子の手を引いて挨拶に来た、父親の顔を見た瞬間……彩芽は息をのんだ。
――その父親は……高校時代、互いに想いを寄せながらも言葉にできなかった、同級生の道枝春希だった。
春希と再会したことによって、止まっていた時計が動き出す彩芽。
『あなた』と過ごした一室で、『君』を想う彩芽……複雑な感情に揺られながら、前を向いて生きようと必死だった。
過去と現在、喪失と再生の狭間で揺れる二人の心が、静かに重なっていく。