あらすじ

二十九歳の誕生日、冴子は夫・流羽から「キツネの妖精」と呼ばれる不思議なぬいぐるみを贈られる。王冠と真紅の数珠をまとい、深い緑の瞳を持つそのぬいぐるみは、夫の祖先が怪盗だったという噂とともに、彼女の手に渡った。団地暮らしながらも、冴子は夫と二人の娘に囲まれ「幸せ」と胸を張れる日々を送っていた。 しかし、夫が交通事故で急逝し、家計は一気に困窮する。生命保険とわずかな貯金もすぐに尽き、冴子は工場勤務に加え、夜はコンビニで働くようになった。睡眠時間はわずか二時間。誕生日にショートケーキ一つしか買えない日々に涙するが、娘たちは「お母さん、お金がなくても幸せだよ」と支え合い、愛情に満ちた家庭を守ってきた。 やがて娘たちは成長し、長女の彩美は就職、次女の優奈は大学へ進学。彩美は学費を助けるため給料の多くを家に入れるほど家族思いに育った。 数年後、彩美が結婚を望む相手・東堂忍を連れてくる。しかし彼の母親は冴子たちの貧しい暮らしを見下し、「家柄が釣り合わない」と結婚を拒む。さらに「豪華な披露宴を開ける資金を出せ」と迫り、最低でも百万円を用意するよう告げる。 娘の幸せのために冴子は「お金はなんとかします」と約束するが、すでに借金の限度額に達していた。友人にも頼れず、残された道は高利の金融──。窮地に立たされた冴子の胸に、ふとあの「キツネのぬいぐるみ」がよぎるのだった。

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エブリスタ
エブリスタ2025/10/02
  • 現在の作品キツネは秘めて笑う。誰も知らない場所で。