あらすじ
「死なないでください――嫁と姑の赦し」
夜の闇に
ひとつの罪が沈んでいた
十八年の沈黙は
凍りついた鎖となり
二人の心を締めつけてきた
十七歳で親を失った娘は
憎しみの棘を胸に育て
七十歳の姑は
犯した過ちを誰にも告げず
影の中で老いていった
「また逃げるんですか」
川辺に響いた声は
刃ではなく
涙に濡れた手のひらだった
「死なないでください」
その叫びが
憎しみをほどき
長い沈黙に
ひとすじの光を差し込ませた
罪は消えない
記憶も消えない
けれど人は
赦しと共に
生き直すことができる
食卓に湯気が立つ
味噌汁の匂いが
ふたりの心を結び直す
涙のしずくが
塩味となって
愛の器を満たしていった