あらすじ

第46回横溝正史ミステリ&ホラー大賞の応募要項に即して「カクヨム」に発表させていただきます。 自分が好きな物を自分が好きなように書いたので、良ければ見てくださると大変嬉しい。 出来れば感想を頂戴できれば、さらにうれしい。 ※カクヨム内に第46回横溝正史ミステリ&ホラー大賞の記載がなかった為、念のため昨年を考慮したタグ付き… __________________________________________ 【あらすじ】 未確認物質は未知であり、人類の希望である。 その希望を回収するベンチャー企業に勤める紅葉は、「幸福を呼ぶ焼肉屋」を調査する為、山奥の天牛町に派遣された。 問題の店では客は涙して「幸福」を口にしている。 店主は、村に伝わるかつての件(くだん)の伝説と、牛頭人神の氏神「大牛神様」の存在を語り、焼肉のたれには御神木の樹液が使われているという。その御神木は大牛神様の依り代であり、大牛神の生誕祭を控えているという。 夜、紅葉が目を覚ますと、村は無人だった。 店主が供物のように肉を敷き詰めて焼き、煙が村を覆った。 生誕祭が開催されるのだ。紅葉が御神木の近くに行けば、割れた御神木から 瘡蓋にように赤い樹液が流れだして、大牛神様は生誕する。天空は煙によって少し明るい光景だった。 その幻想さは終末だった。肉の焼ける音が祝祭を告げ、村人たちは幸福の笑みを浮かべて神に還っていく。店主は大牛神様に祈った。 「僕はあなたがずっと好きだった。あなたに幸せでいてほしかった。」 店主もまた御神木に還っていく。大牛神様は全てを受け入れていく。 御神木は人を受け入れて、境界を曖昧にした。神と人の境界は煙の中に溶けていく。 主人公は、自分は村人のように吸収されまいと多幸感に抗いながら、樹液のサンプルを回収して山から脱出する。 事件終了した三日後、紅葉は奇跡的に帰還した。村は焼け野原になり住民も遺体も神隠しにあった。未確認回収会社は御神木の根元に夥しい白骨が見つかる。 紅葉が採取した「樹液」は幸福をもたらすとして、研究所に引き渡されて研究されるらしい。 日常に戻った紅葉は、近所の焼肉屋に行った。任務が終わった後の一人焼肉は格別だ。 一人で焼肉をするとは、網を挟んだ鏡と話すこと。つまり、己との対話だ。 自身の将来を憂いながら、俯いて眼前の肉を世話する。 件の生まれる意味とは何か。神と人の境界とは何か。 一人で黙々と焼いていき、口を幸福で満たす。 幸福に満ちた途端のことだった。 確かに煙が影となって目の前に座っていた。 排煙ダクトがあるのに、煙はそこにあった。 日常的な生活を未確認事象が侵略してくる。 きっと顔をあげてはいけない。焼肉の汗は自身の冷や汗のようだった。 紅葉は会社のマニュアルに従い、正常を装っていた。 煙の向こうから優しい囁きが聞こえる。 「あなたを愛している。あなたは村の一員だ」 身前の陰は、祝詞を呟いている。 目線だけ前を向けば、何もいなかった。 だが、耳には確かに言葉が届いていた。まるで予言のようだった。 「犠牲を忘れよ。私はそれでもあなたを救い続けよう。」 愛ゆえに人を飲み込む神は、紅葉に何を託したのか。 紅葉は先ほどまで、世話していた肉を思い出した。 網には黒焦げた肉だけが、あった。焼死体のように見える焦げた肉。 食べられないその肉を、網の間から底に落とした。 この網の上で、犠牲が生まれた。 「……この世は、網の上……か。」 肉を食べるとは、自他の境界を曖昧にする行為だ。 牛がほかの牛を食べても、元の牛にはならないように。 焼肉に含まれた樹液を飲んで、御神木から逃げた自分は、「人」でいられるのだろうか。 底に落ちた黒焦げの肉からは煙が上がっている。 煙の先で、店の看板に描かれている牛が笑顔で微笑んでいた。

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カクヨム
カクヨム2025/10/01
  • 現在の作品煙の向こうで【予言】が死んだ