あらすじ
この世界は我々の知る歴史とは異なる。70年前の戦争の結果、日本列島は2つの国に分かれた。中央アルプスを境に、西には、戦前の制度と価値観を守り続け、軍服と礼儀が息づく社会が形づく「大日本帝国」が存在する。一方、東の「日本国」は高度成長を遂げ経済が成熟した先進国であるが、少子高齢化と人口減少に直面し、労働力不足にあえいでいた。経済の停滞を打破するため、日本国政府は大日本帝国との交流を開始する。
四菱商事の若き社員・佐切は、使節団の一員として帝国に派遣されることになる。そこで目にしたのは、歴史が息づく街並みと、日々を力強く生きる人々の姿だった。そして迎賓館で出会った陸軍少佐・秋山正幸――大胆不敵で聡明な青年将校は、佐切に問いかける。「何を目的として生きるのか」と。その言葉は、学歴と就職、そして安定を追い求めてきた彼女の人生を根底から揺さぶる。社会の期待に流され漂うように生きてきた自分。だが、帝国の厳しい現実と、秋山の強烈な眼差しに触れ、佐切は「生きる意味」を探し始める。二つの日本の邂逅は、国家の未来と一人の女性の魂を問う旅の始まりだった。