あらすじ
貧しい辺境伯の三女として生まれたリゼット。魔力も持たず、華やかさもない彼女は、王都の社交界で「出来損ない」と嘲笑われ、挙句の果てには食い扶持減らしのために辺境のさらに奥地、忘れられた土地へと追いやられてしまう。
しかし、彼女には秘密があった。前世は、地方の伝承や風習を研究する地味な民俗学者だったのだ。
誰も見向きもしない古びた祠、意味不明とされる奇妙な祭り、ガラクタ扱いの古文書。それらが、失われた古代の技術や強力な神々の加護を得るための重要な儀式であることを、リゼットの知識は見抜いてしまう。
「この石ころ、古代の神様への捧げものだったんだ。あっちの変な踊りは、雨乞いの儀式の簡略化された形……!」
ただ、前世の知識欲と少しでもマシな食生活への渇望から、忘れられた神々を祀り、古の儀式を復活させていくだけだったのに。寂れた土地はみるみる豊かになり、枯れた泉からは水が湧き、なぜかリゼットの言葉は神託として扱われるようになってしまった。
本人は美味しい干し肉と温かいスープが手に入れば満足なのに、周囲の勘違いは加速していく。