あらすじ
私の母は、ちょっと変わった人だった。
授業参観で教壇に立つ。
庭で本気で空を飛ぼうとする。
喧嘩相手の親を説得して逆に呆れさせる。
恥ずかしくて、いつも穴があったら入りたかった。
――けれど、中学二年の夏。
母は交通事故で亡くなった。
静かになった家。
「もう恥をかかなくていい」と言い聞かせても、
冷たくなった母と対面した瞬間、あふれだした思い出。
私は気づいた。母が大好きだったと。
母の部屋に残されていた「やりたいことリスト」。
一行目に書かれていたのは――《滋賀県立膳所高校に合格する》。
全国屈指の進学校に挑み、合格した私。
父と二人での新しい暮らしにも慣れたある日。
リビングに、見知らぬ少女が立っていた。
栗色の髪、宝石のような瞳、異世界風の服装。
そして微笑んで、こう言った。
「おかえり」
――母の、異世界での物語が始まる。