あらすじ
システム開発会社の技術責任者・音川は、冷静で的確、誰よりも理論に忠実な男。
ヨーロッパの血を引く整った容貌と、鍛えられた肉体からは成熟した男のオーラが立ち上る。厳格な姿勢とぶっきらぼうな口調が誤解を招きやすいが、技術者としての情熱と部下への誠実さは誰よりも熱い。
社内随一の技術者でありながら、感情を持ち込まない厳格な姿勢を崩さず、私生活を一切見せないその姿は、鉄のように硬く、そして美しかった。
そんな彼の均衡が、たった一人の“部下”によって、音もなく崩されていく。
ある日、社内の事件をきっかけに開発部へ異動してきた若手デザイナー・泉。
彼は、独学で磨いた才気と、無垢さと奔放さが同居する、どこか危うい存在。理性では到底、計算できない男だった。
言葉の節々に滲む純粋さ。
不意に向けられる、無防備な眼差し。
その笑顔に心が揺れるたび、彼に触れそうになるたび、
音川の中で何かが確かにほどけていく。
「触れたら終わりだ」
仕事と私情を分けてきたはずの人生。
論理で説明できない感情など、自分にはあり得ないと信じていた日々。
それが、泉の言葉ひとつ、距離ひとつで、脆くも揺らぎはじめる。
これは、“触れてはいけない相手”に堕ちていく、論理の男の恋の記録。