あらすじ
「ほら、ここなんかいいんじゃないか? な? な?」
「ふうん……」
彼女が訝しげに返事をした。『どうせ、予約しないと無理なんじゃないの?』とでも言いたげな目つきである。
まあ、無理もない。今日は彼女の誕生日。本来なら前々から行きたがっていた有名レストランでディナーの予定だったのだが、おれが予約をミスして、門前払いを食らってしまったのだ。
彼女を宥めながら歩いていたところ、たまたま見つけたのがこのレストランだった。こぢんまりしているが、看板は洒落ていて照明も柔らかく、雰囲気は悪くない。……まあ、そう思い込むしかないのかもしれない。
おれはまだつんとしてる彼女を背に、頭を掻きながらドアを押し開けた。
「いらっしゃいませ。ようこそお越しくださいました。当レストランの給仕長、室町と申します。お席までご案内いたします」