あらすじ

九年と十二年のあいだ — 要介護5と家族のレジリエンス

九年と十二年のあいだに
刻まれるのは秒針ではなく
手をさする温もり
スプーンを運ぶ震える指
「まだ味がする」と言う声のかすれ

数字は冷たく平均を告げる
九年、十二年、そして一年半
けれど、ひとつの呼吸、ひとつの笑みが
統計を裏切り、今日を照らす

要介護五と記された紙の重み
だが、その隣に並ぶのは
母の茶碗の湯気
娘の声の励まし
孫の笑顔のいたずら

褥瘡を防ぐために体を返すたび
眠りの深さを確かめるまなざしの奥に
「生きている」と「支えている」が
静かに結び合う

夕焼けを見たい、と書かれた文字
窓辺に移されたベッド
頬を染める橙の光
それは余命ではなく余生の選択

九年も、十二年も
あるいは、わずか一年半でさえ
ひとつの家族にとっては
永遠へと続く物語

平均は道しるべに過ぎない
歩いた道にこそ残る
手のひらの温度
食卓の記憶
そして「今日も生きた」という確かさ

――レジリエンスとは
時間に抗うことではなく
限られた時間を
共にたぐり寄せる力

九年と十二年のあいだ
その空白を埋めるのは
統計ではなく
あなたと私の、日々の呼吸。

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アルファポリス
アルファポリス2025/09/29
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