あらすじ
鬼神子千春は高校2年生で、御水神社の巫女助勤(バイト巫女)として働く少女。日の出が遅くなる秋の朝、彼女は自転車で神社に向かい、拝殿の階段でぼんやりと空を見上げる女性、桜庭翔子と再会する。翔子は以前、千春に癒やされたことがあり、互いに顔見知りだ。翔子は大都会で急死した叔父の葬儀に参列した帰りで、心に重いものを抱えていた。翔子は大都会の火葬場での体験を語る。そこでは遺体が流れ作業のように処理され、生命の神聖さを感じられなかったこと、煙も雲もない空に叔父の存在を見出せなかったことが彼女を打ちのめしていた。「人間とは何か」「生きるとは何か」と問い、都会の無機質さに尊厳が冒されたと感じる翔子。千春は理系的な視点で「人間は物質として雲に還るかもしれない」と答えつつ、物質だけではない「何か」を信じる心をほのめかす。
この物語は、死と向き合った喪失感と、雲や自然を通じて命の尊厳を見つめ直す二人の少女の交流を描く。物質と心、都会と地方の対比を通じて、人間の存在と死後の行方を静かに問いかける。