あらすじ

厨房では、俺は“王”だった。 【神の舌】と讃えられた天才シェフ、天海大地。しかし、傲慢の果てに全てを失い、舌癌で料理人としての魂である「味覚」を奪われた俺は、絶望の中で自ら命を絶った。 ——はずだった。 次に目覚めた時、俺は見知らぬ女の身体に転生していた。 魂は男、肉体は見知らぬ女。おまけに、この身体はこの土地に地縛されているらしく、レストランの敷地から一歩でも外に出ようとすると、まるで分厚いガラスのような見えない壁に阻まれて弾き返されてしまう。 絶望的な飢えの中、俺はシェフとしての本能だけで、ゴミの中から見つけた朽ちかけの食材で、ただ生きるための一杯のスープを作る。 その匂いを嗅ぎつけたのは、仲間に裏切られ、全てを失った元マフィアのゴブリン『ギブ』だった。 「取引だ。この場所に縛られて動けねぇお前の代わりに、俺様が“ゴミ”を運んでやる。代わりにお前は、俺のために料理を作れ」 奇妙な共犯関係が始まり、俺はギブに問いかける。 「……ここは、一体どんな世界なんだ?」 ギブは、俺が作った料理を貪りながら、ゴミでも見るかのような目で俺を一瞥した。 「お前、本当に何も知らねえんだな。まあ、罪人は記憶も奪われんのかね」 彼は、骨の欠片を吐き捨てて続けた。 「ここは、神様が“究極の美食”のためだけに創った、料理人が実権を握る世界だ。……だが、それはお前ら人間以外の話。かつて栄華を誇ったはずの人類は、神との『料理戦争』に大敗して魔法を奪われ、今じゃ俺たちゴブリンよりも下の、“ゴキブリ”扱いさ」 ここは奈落。世界の全てが見捨てるこの世の廃棄場。 残されたのは、かつてはレストランだったらしいこの廃墟だけ。 これは、地の底で出会った、二人の敗北者による、世界への反逆の物語。 死んだ大地は料理で聖域へと変わるのか。 そして、時々蘇る断片的な記憶の残滓。そこに映るのは、この女(肉体)が料理をしていた、今は失われた日々の光景。 ――この女は、一体誰なんだ? なぜ、これほどの憎悪を一身に受けている? このレストランに隠された謎とは? 神の舌を失った俺が、神の舌を持つ女の肉体で、ゴミ拾いから始めるレストラン再建記。 ——これは、世界を救う物語じゃない。俺が、この理不尽な運命の謎をすべて解き明かし、もう一度だけ、腹の底から「美味い」と笑うための、俺自身の物語だ。

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小説を読もう2025/09/28
  • 現在の作品美食のためだけに神が創った世界で、人類が【ゴキブリ】扱いな件について。 ~味覚を失い転生した俺、なぜか転生先の肉体(美少女)が世界の果てで地縛されていたので、廃墟になったレストランを再建します~