あらすじ
海沿いの静かな温泉宿。月光に照らされた露天風呂で、母・百合子と娘・瑠璃は湯に浸かりながら、静かに言葉を交わす。離婚の傷跡、親子の距離、そして瑠璃の告白——「だからレズビアンなの」。湯気に溶けるようなその言葉に、百合子は驚きながらも、否定せず、むしろ娘の人生を物語にしたいと語る。母としての境界線が揺らぎながらも、百合子は「あなたの人生は、誰よりも美しい物語になると思ったのよ」と静かに呟く。
湯上がりの座敷では、蟹しゃぶ鍋を囲む三人の浴衣姿。瑠璃の恋人・スージーは、湯上がりの艶やかな肌を浴衣に包みながら、軽口を叩く。「百合子さんは、瑠璃のキス拒絶するんですか?」と笑うスージーに、百合子は戸惑いながらも、娘の幸せそうな表情に安堵する。鍋の湯気と蟹の香りが空間を満たし、三人の間に流れる空気は、どこか滑稽で、どこか切実だった。
スージーはアメリカ出身の大学生。日本文化と歴史を学びながら、アニメの脚本家を目指している。彼女の姉は「貨幣の巫女」として活動する歌手で、貨幣制度と王政を批判する歌を歌っている。百合子とスージーは中立国ヴェルミナの港町で、その巫女のコンサートを訪れる。霧に包まれた劇場で、白い衣をまとった巫女が歌う。