あらすじ
魔法学徒ルイは、誰にも触れられない塔の最上階で、妄想と記録だけを友に生きていた。
そこに現れたのは、神託の巫女エリナ──命を捧げる運命を背負いながら、笑顔で風を纏う少女。
彼女の声が、ルイの静寂を揺らし、妄想の世界に“他者”を招き入れる。
やがて訪れる儀式の夜。
本来なら彼女は死ぬはずだった──だが、ルイは禁術を使い、自らの魔力すべてと引き換えに彼女の身体を創り、魂を呼び戻す。
それは奇跡ではなく、選択だった。
魔力を失ったルイと、命を繋ぎ直されたエリナ。
二人は王国を離れ、静かな村、聖地の墓所、魔力の源泉を巡る旅へと出る。
けれど、魔力が少しずつ戻るたびに、エリナの身体は生命力を失っていく──
彼女の命は、彼の魔法の“代償”として存在していたのだ。
「君が生きるなら、僕は魔法なんていらない」
「でも、君の魔法が誰かを救えるなら、私は消えてもいい」
選び合う命。
記録されない愛。
果実の片割れが、再び隣に戻るまでの、静かで切ない旅路。
これは、喪失の先にある再生の物語。
そして、誰にも読まれなくても、確かにここにある“生きた記録”──