あらすじ
西暦2077年、世界はAR(拡張現実)技術によって「理想都市」に完全に上書きされていた。
主人公アキラが住む第六区画は、リセット法によりかつての街の記憶を消され、ARグラスを通しては、幾何学的なグリッド線と冷たい青色のレーザーが引かれた完璧な更地に見える。しかし、グラスを外せばそこにあるのは、父の町工場があった場所の生々しい瓦礫の山だった。
「ARで我々が見せられているのは、ただの完成予想図だ。現実にあるのは、お前たちが愛した街を徹底的に消し去る解体作業の跡だ。」
隣に立つ上司サトウはARグラスを外し、アキラに**「この欺瞞(ぎまん)」**の現実を突きつける。サトウ自身、この理想社会建設に加担してきた罪悪感を抱えていた。
その夜、アキラはVR(仮想現実)へ飛び込む。そこで待っていたのは、この「理想都市」の設計者であり、かつての親友、ヒロキだった。VR内の第六区画では、父の町工場が再現され、ヒロキは自分の「理想」の世界に閉じこもっていた。
アキラはヒロキに怒りをぶつける。「あんたの理想は、俺たちの現実を殺したんだ!」
ヒロキは設計者としての誇りと、自分の設計図が政府によって「殺人の道具」に変質させられたという罪に引き裂かれていた。彼は自らが作ったシステムを壊すため、アキラに協力を求める。
翌日、アキラはサトウと合流し、VR空間を警備する警備兵たちが見る虚像を利用して、システムの中核を破壊する計画を立てる。
アキラとヒロキはVRヘッドセットを装着し、戦いの舞台である仮想空間へ。警備システムの猛攻に対し、ヒロキの技術と、アキラの**「失われた街の記憶データ」**を設計図の根本に注入する。現実の不完全な風景(落書きされた壁、傾いた電柱)がデータとして再構築され、ヒロキの「完璧な設計図」を侵食していく。
システム崩壊後、欺瞞は暴かれ、リセット法は凍結された。ヒロキは逮捕されることを選び、アキラは瓦礫の第六区画に戻る。家は帰ってこなかったが、アキラは瓦礫から父の錆びた工具の破片を掘り出す。
冷たいARのレーザーは見えない。アキラは工具を使い、瓦礫の平地に不規則な線を刻み始める。それはヒロキのグリッド線とは対照的な、自分たちが生きた街の地図だった。
これは、完璧な虚構を脱ぎ捨て、不完全な現実を取り戻すための、ひとりの男の物語。