あらすじ
罪人の娘として生まれ、後宮の片隅で毒見係として生きる少女、鈴蘭(りんらん)。彼女の唯一の心の慰めは、薬草園で植物たちの声なき声に耳を傾けることだった。植物の微かな気配からその性質を読み解く不思議な力を持つ彼女は、ある日、皇帝を襲った毒殺未遂事件の謎を解き明かす。
その類まれな才覚を見出したのは、冷酷非情と噂される若き皇帝・蒼焔(そうえん)。彼は鈴蘭を側仕えとして傍に置くが、その仮面の下には、深い孤独と癒やされぬ痛みを隠していた。鈴蘭が調合する薬草茶の香りだけが、彼の心を解きほぐしていく。
誰にも心を開かなかった皇帝と、植物としか心を通わせなかった女官。二つの孤独な魂は、いつしか互いを唯一無二の存在として求め合うようになる。しかし、皇帝の寵愛は、きらびやかな後宮に渦巻く嫉妬と陰謀の格好の的となる。次々と襲い来る危機に、鈴蘭は植物の知識という武器で立ち向かう。
これは、一人の健気な女官が、その知恵と真心で巨大な陰謀を暴き、冷たい氷で覆われた皇帝の心を溶かし、国の運命さえも変えていく、愛と再生の物語。
【登場人物紹介】
◆鈴蘭(りんらん)
本作の主人公。罪人の娘という刻印を背負い、後宮の最下層で毒見係として働く女官。植物の気配や状態を敏感に感じ取り、その性質を深く理解する特別な力を持つ。控えめで心優しい性格だが、芯は強く、逆境にも屈しない。
◆蒼焔(そうえん)
彩華国の若き皇帝。貴族たちの権力争いを抑えるため、感情を押し殺し「冷酷皇帝」として振る舞っている。しかし、その内面には長年の孤独と心の痛みを抱え、不眠に悩まされている。鈴蘭の聡明さと純粋さに惹かれていく。
◆珠妃(しゅひ)
皇帝の寵妃。有力な貴族の娘で、美貌と高いプライドを持つ。蒼焔の寵愛を独占しようと画策し、皇帝の側近くに仕えるようになった鈴蘭を激しく憎み、様々な罠を仕掛ける。
◆魏巌(ぎがん)
彩華国の宰相。穏やかな笑みの裏に、国を揺るがすほどの野望を隠している。かつて鈴蘭の父親を陥れた張本人であり、珠妃と手を組み、蒼焔と鈴蘭を排除しようと企む。