あらすじ
どうやって逃げて来たのかも分からなかった。今、自分が何処にいるのかも。水溜まりの雨水を吸い、道に這う虫を食って、ひたすら遠くへと歩いた。冬の気配が漂う山中で、冷たい雨に打たれて、身体が動かなくなった。『もう、いいや。』逃げることも、何もかもどうでもよくなって、大きな木の根元に背を預けて、そのまま気を失うように眠った。
夢の中で、誰かが甘い蜜を口に入れてくれた。暖かい寝床に居る夢を見た。
目覚めたら、薄暗い小屋の中の寝台で寝ていた。すぐ傍には、むっくりと座って寝ている老人が居た。暖炉の火が赤々と燃えていて、室内を揺らめかしながら照らし出していた。