あらすじ
高校三年生の春。クラス替えで一喜一憂している人たちの中。
仁比山《にいやま》千景《ちかげ》は一人喜び悲しみもせず自身のクラスを確認し、そのまま教室へと向かった――。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「……ここか」
黒板に貼られている紙を見て自分の席を確認して座わると、目の前に一人の男子生徒がいた。
しかし、その男子生徒は仁比山の姿を見るなりなぜか固まっており、仁比山も「どこかで見た事がある様な?」とふと思ったのだが、思い出ずにいると……。
「覚えてないか? 二井見だよ。二井見《にいみ》等《ひとし》。昔同じ町内に住んでいた」
「同じ町内に住んでいた?」
「そうそう。町内会のお祭りとか一緒に行っただろ?」
「にいみ……ああ!」
「やっと思い出したか」
ようやく懐かしい思い出の中から一人の男子を引き出した。
同じ町内で同じ学校だった一人の少年。
しかし、ある日突然家族全員引っ越しをしていなくなってしまった仁比山の小学校時代の友達の一人だった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
そんな中。クラス替え早々に学校行事の一つ春の遠足の場所を決める事になったのだが、候補となって上がったのがなんとそこは兄が行方不明になってしまった場所だった。
「俺ももう六年なんだから。そんなに心配しなくても大丈夫だって!」
あの日。熱を出してしまい、母が千景に付き添いで行けなくなってしまったのだが、兄はやけに元気で「自分は大丈夫だ」とアピールをしていた。
そんな兄の姿を熱でボーッとする頭で見ていた。それが余計に悲しくて……思わず泣いてしまったのを覚えている。そして、それが千景にとって兄の姿を見た最後の時になってしまったのである――。