あらすじ
生まれてすぐに、個としての尊厳を奪われた少年がいた。
暗澹とした地下帝国の最下層ーーー
ゴミ溜めのようなスラム街の一角で彼は拾われた。
名前も与えられず、疑問を抱くこともなく、ただ機械のように過ごす毎日。
それだけが彼の生き残る唯一の術だったが故に。
だがある日、彼の世界は変化の刻を迎える。
地下帝国全体に響き渡る警報音、慌てふためく同僚たち、崩れる警備体制。
その時、彼の頭の中に稲妻が走った。
「今、逃げれば...?」
それは彼が抱いた最初の感情。
すなわちーーー自由への渇望
衝動に任せるままに、全てをかなぐり捨てて、少年は駆けた。
過去もしがらみも、何もかもを地下に置き去りにして、ようやく少年は地上へと辿り着く。
たどり着いたその先に広がっていたのは、「無限の未知」
雲を喰らう巨獣、空を旅する飛行国家、龍を生み出す霊地。科学と魔法が手を取り合った超次元の世界は、ありえないほどの未知で埋め尽くされていた。
少年は初めて命令抜きで言葉を紡ぐ。
「......知りたい」
それは願いではない、本能に近いなにか。
この瞬間から少年の物語は始まるーーー
そして、少年は一歩を踏み出した。
小さく、けれど確かに――
世界の理さえ、いつか揺るがす咆哮へと繋がる、最初の一歩を。