あらすじ
古書店「月影堂」の店主、月島守。彼のもう一つの顔は、街に漂う人々の忘れられた記憶を蒐集しては、ガラス瓶に封じ込める「記憶の蒐集家」。彼は、かつて灯台守として大災害の夜に人々を救えなかったという、重い罪の記憶を抱えて生きていた。
慰霊の日が近づく満月の夜、彼は一人の少女ミオと出会う。ミオは、同じ災害の夜に灯台からの謎の信号で救われた父の「命の恩人」を探していた。ミオが語る英雄の姿は、月島の罪悪感を深く抉る。
やがて慰霊の夜、店に満ちた記憶たちが過去の真実を映し出す。英雄的な信号を送ったのは灯台守だった月島ではなく、ミオの父親だったのだ。月島は、ただ無力に悲劇を見つめていた一人の避難者に過ぎなかった。生き残った罪悪感が、彼に「救えなかった灯台守」という偽りの記憶を植え付けていたのである。
真実を知り崩れ落ちる月島に、ミオは父の本当の想いを告げる。「見ていてくれる人がいたから、一人ではなかった」。偽りの罪から解放された月島は、ミオに父の記憶を返す。記憶を繋ぐ彼の仕事は、贖罪から、魂に寄り添うための尊い営みへと変わるのだった。