あらすじ
一年前に友人たちとのドライブ中に事故を起こし、彼らを失ったユウキは、深い自責の念に囚われ、生きる希望を失っていた。友人たちとの思い出が詰まった車を実家の庭に放置したまま、毎日をただやり過ごす日々。なぜ俺だけが……。あの日の罪悪感は、呪いのように彼を縛りつけていた。
ある日、ユウキは錆びついた車を整理しようとドアを開ける。運転席のダッシュボードには、事故で損傷したまま放置されていたARグラスがあった。ユウキはためらいながらもそれを手に取り、装着してみる。
「やっぱり、何も映らないか」
安堵と絶望が同時に押し寄せたその瞬間、グラスのレンズがかすかに光を放ち、世界が一変する。運転席のユウキの隣には、半透明で光り輝く友人たち──シンジ、カケル、マナミが座っていた。故障したARグラスは、ユウキの心の傷に共鳴するように、天国を映し出していたのだ。ユウキが罪悪感に苛まれるたび、グラスのひび割れが不気味な赤色に強く光り、友人たちの姿は歪んで見えた。それはまるで、ユウキの心のひび割れを可視化しているようだった。
言葉は届かない。それでも、ユウキはスマホの翻訳アプリを使い、不完全な単語を拾うことで、彼らとの対話を試みる。「ドライブ…行きたいのか?」。ユウキの問いに、翻訳アプリは「イコウゼ!」と返す。言葉は不完全でも、気持ちは伝わる。
再び始まった、三人との「旅行」。ユウキはハンドルを握り、あの日の事故現場へ向かう。震える手、荒い呼吸。一年分の罪悪感が再び彼を襲う。しかしその瞬間、翻訳アプリに現れた言葉は、「キミノセイジャナイ」。
ユウキの心に一年間こびりついていた呪いは、親友のたった一言で解き放たれた。号泣しながらハンドルを握り、彼は友人たちとの最後の旅を続ける。そして、ついに目的地のエメラルドグリーンの海に到着したとき、グラスの光が弱まり、彼らの姿は光の粒となって空へと昇っていく。
ユウキはグラスを外した。もう何も映らない。しかし、彼の心は温かい光に満ちていた。過去を乗り越え、愛する人々の意志を継ぐ決意をしたユウキの、新しい旅が今、始まる。