あらすじ
世界は二つに分かたれていた。
豊かな感情を持つが、昨日のことさえ忘れてしまう人々が住む**「感情の街」。
一切の感情を捨て去り、完璧な記憶力を持つ人々が暮らす「記憶の街」**。
感情の街に住む少年アオイは、日々の記憶を失いながらも、胸に消えない「絶望的な孤独感」を抱えていた。ある日、彼は二つの街を繋ぐ陸橋で、記憶の街の少女ハルと出会う。
彼の儚い感情を、ハルは完璧なデータとして記録する。それは、アオイにとって自らの存在証明であり、膨大な知識の中で虚無を抱えていたハルにとっても、世界で初めて意味を持つデータに見えた。
互いに欠けたものを補い合い、次第に惹かれ合う二人。
彼らはやがて、失われた心と記憶を一つにするという伝説の儀式「心転写」に、共に未来を生きるための最後の希望を見出す。
しかし、二人の絆は、世界の秩序を揺るがす「脅威」と見なされ、管理社会の冷たい追っ手が迫る。
追われる身となった二人が、全てを懸けて託した伝説の儀式。それは二人を完全な存在へと導く奇跡なのか、それとも、さらに深い絶望への入り口なのか──。
心と記憶の狭間で奏でられる、切なく、そして美しい悲劇の詩(うた)。