あらすじ
あの世にて繰り広げられる、二つの魂の恋物語。
※性描写があります。そちらに関しては非公開としております。
【あらすじ(ネタバレあり)】
ここは地獄。生前悪い行いをした死者たちの反省を促す、ある種の更生施設である。そこに勤める獄卒たちは、皆一様に鬼の面を被っていた。そんな獄卒の一人・鈴牙(りんが)は、日々事務処理作業に追われていた。彼は暴力を好まないため、死者たちを責め苛む仕事には従事しておらず、専ら死者たちの裁判に用いる情報などを整理する立場だった。
そんな彼の仕事を邪魔する死者が一人。その名は嶌木湊(しまぎ みなと)。湊は鈴牙に絡んだり、懲役をサボったり、裁判を受ける死者たちを冷やかしたりして、鈴牙のストレスを増やし続けていた。ついに限界に達した鈴牙は、なぜ自分に執拗に絡んでくるのか、湊を問い詰める。彼は答えず、ふざけて鈴牙の仮面を剥いでしまう。仮面の下の美しい鈴牙の素顔を目にした湊は、言葉を失って硬直する。そしてそれ以来、湊はあまり鈴牙に近寄らなくなり、おとなしく刑に服すようになった。
そんなしおらしい湊に、疑問と物足りなさを抱いた鈴牙は、彼にそのような態度を取る理由を問う。答えを渋る湊だったが、鈴牙の真剣な表情に、ついに口を割る。湊は、鈴牙が前世の恋人・千明創士郎(ちぎら そうしろう)に酷似しているのだと語る。実は、鈴牙は創士郎その人であり、湊の前世・七橋雪彦(ななはし ゆきひこ)と創士郎は、江戸時代を生きた恋人同士だった。しかし二人は結ばれず、心中を図った末に創士郎は命を落とし、雪彦は生き残り、その後死刑になっていた。創士郎は死後、地獄に堕ちるが、その素質を見込まれ、記憶を消されて「鈴牙」という名を与えられ、獄卒となった。一方の雪彦は地獄で罪を償った後、「嶌木湊」として現世に転生した。しかし創士郎の生まれ変わりと出会うことはできず、まだ彼が地獄にいるかもしれないと思った湊は、様々な悪行を働き、再び地獄に堕ちる。そして出会ったのが、獄卒となった鈴牙だった。湊が鈴牙に近づいた理由は、彼の声や雰囲気にどこか懐かしさを感じていたからだった。
鈴牙は、湊のまっすぐな思いに絆され、徐々に彼との距離を縮めていき、やがて二人は恋に落ちる。しかし、そこには獄卒と死者という身分の差と、周囲の無理解が立ちふさがっていた。そして、鈴牙が獄卒としての禁忌を犯し、死者と恋に落ちたことが他の獄卒たちに露見し、彼は追われる身となってしまう。
今度こそ鈴牙と添い遂げると決めた湊は、彼とともに逃げるが、結局は捕まり、罰が下るのを待つことになる。しかし、二人を見守っていた獄卒の一人・斧宥(ふゆう)によって牢から助け出され、鈴牙と湊は三途の川のほとりに辿り着く。そこには閻魔が待ち受けていた。観念する二人だったが、閻魔は地獄に愛は不要であり、二人はこの場に相応しくないとして、三途の川に飛び込むよう指示する。それは、現世への転生を意味する行為だった。