あらすじ

ブラック企業につとめていた頃は、三ヶ月休みがないこともざらだった。一年間も育休をくれる会社に転職できてよかった。思えば二十代は金を稼ぎ、妻や猫を守り、家や車のローンを返す日々だった。でも、それは勘違いだった。十代の頃は、ゲームばっかりしてた子供が、仕事一筋になって、大人になったと背伸びしていただけだ。  三十代になって断言できる。金を稼ぐより育児のほうがかけがえのない時間である。素晴らしいぞ、育休。最近は、赤ん坊の夜泣きも少なくなってきたから、気分転換に十代の青春時代の象徴だった美少女ゲームを攻略して、エロシーンを拝んでいる。  エロゲーに対する熱い気持ちが戻ってきたのだ。だから、好きなゲームが令和にリメイクするならば、クラファンで三〇〇万円の支援コースをするのは当たり前だろ?    █████  ゼロ年代初頭に誕生した一八禁美少女ゲーム【超能力疾患】は、発売前から雑誌での期待感も高かった。発売後は期待を裏切らずに予想だけを裏切る物語に、文句なしで大人気になっていく。  雑誌では同タイトルのメインヒロイン神楽木鞘香視点の小説連載がはじまり、それが完結を迎えたあたりで、ゲームのリニューアル版が発表される。  その後も、時代とともにパソコンのOSが新しくなるにつれ、そのOSに対応したバージョンとして何度もリニューアルされ、追加シナリオもその度に増えていく。  全年齢向けにエロシーンが除外されたバージョンが、家庭用ゲーム機対応として販売されれば、そちらでもブームを引き起こす。やがて、テレビアニメ化、劇場版アニメの放映とメディア露出も増えていく。  順風満帆かと思われていたが、突如として販売元の会社が倒産する。売りに出されたキャラクターの版権は、作品舞台のモデルと言われている田舎町が購入した。  その町では【超能力疾患】を町おこしに利用しはじめるのだった。  後藤茂が【超能力疾患】に出会ったのは、自分が転校する前の町を舞台にしたゲームがあると知ったからだ。  ゲームをプレイするキッカケは軽い気持ちだったが、エンディングを観終わった頃には、エロゲーバージョン発売時に一八歳になっていなかった自らを呪ったぐらいだ。  リアルタイムでの熱狂を求めてしまうのは当然の行動だった。高校三年生になった頃には、町おこしで盛り上がる田舎町に、大量のグッズと共に一人暮らしをはじめたぐらいだ。かつて住んでいたことにより、色々と面倒なことに直面し、少年は大人になっていく。  そして時は流れ、妻と子供とペットにまで恵まれたマイホームでの育休中に、茂の中でエロゲー熱が戻ってくる。タイミングよく【超能力疾患】を再誕させるためのクラウドファンディングの話を知ることになれば、大人の財力を発揮させるのも当然だ。  とりあえず、お気持ちとして八万円のコースを支援したのだが、出来れば三〇〇万円のコースも支援したいので、妻を説得すべく茂は長い話をはじめる。  茂が高校三年生のとき、かつての町に戻ってきたのは、町おこしでとある実績を達成して、ゲームのヒロインと結婚するためだったのを。  当時の町では、仲の良かった面々が大勢おり、幼馴染みの名前がゲームヒロインと同じだったことで、幼馴染みと結婚するために帰ってきたと勘違いされた話もしてやる。  さらには、全年齢版しかプレイしたことのない年下の女が、同じヒロインと結婚しようとしてライバルになったりなんかもして。  とにかく、最後まできいてから、クラファンで三〇〇万円支援していいか、判断してくれ。  高校三年生の茂が、エロゲーのキャラクターを使った町おこしを通じて、成長した話だ。

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カクヨム
カクヨム2025/09/22
  • 現在の作品エロゲーのクラファンで三〇〇万円支援したいから、妻よ俺の話をきけ