あらすじ
――時は江戸末期。
紅蓮楼(ぐれんろう)と呼ばれる遊郭に、一際目を引く花魁がいた。名を「お蝶」という。
艶やかでありながらどこか人ならぬ気配を纏い、その美貌と立ち振る舞いは、人々を惹きつけ、畏れさせた。
ある嵐の夜、道に倒れていた少女・こはるを助けたことを皮切りに、紅蓮楼の奥底に蠢く“異形の気配”が静かに動き出す。
神隠しのように女郎がひとり、またひとりと消えていく中、花魁お蝶と、その背後に控える謎の黒装束の男「黒子」が、密かに事の真相に迫っていく。
欲望と妖しが交差する色町にて――
これは、艶やかなる花の貌を借りた者たちの、哀しき宿命と静かな抗いの記録。
「魅せやす、殺りやす、咲かせやす。この世には、悪の蔓延る処なし。今宵も華を咲かせやしょう」
「夜桜お蝶――毒を持って毒を制しに、参上つかまつりやした」
華やかさの裏に潜む影、その刃が今、闇を裂く。