あらすじ
れおちゃんは真っ青な顔をしている。まるで、幽霊でも見ているかのような目で、うちを見ている。
「れおちゃん、どうしたの」
「あたしにかまわないでよ!」
それは、ナイフのようなするどさをもった、悲鳴だった。れおちゃんの強く握りしめた手が、震えている。くちびるをかみしめ、肩で息をしていて、息のつまった声で、れおちゃんはうちをにらみつけた。
「最初から嫌われていれば、誰も寄ってこないでしょ」
「友達、ほしくないの?」
「いらない。あたしのそばには、誰もいてほしくない」
鼻で笑って、れおちゃんはガーデンテーブルにランドセルを下ろした。
「あんたって、何。学級委員よりも、タチがわるいね。平和主義者? それとも、偽善者?」
胸のあたりが、ぐさり、と痛む。すると、なぜか、れおちゃんのほうが傷ついた顔をした。だから、なんだか放っておけなくて、うちはれおちゃんに一歩近づいた。
「うちは、誰にも傷ついてほしくないだけ」
「ふうん。あんた自身は、誰も傷つけたことがないわけ」
「もちろん。誰かを傷つけたことなんてないよ。なんでそんなことを聞くの?」
「たいそうな善人よね。出家でもしたら」
「しゅっけ、って?」
「お坊さんになったら、っていってんの」
れおちゃんは庭のすみで山になっていた雑草の山を一掴みすると、うちに向かって投げつけてきた。
緑色の雑草が、雨のようにうちに降り注ぐ。青臭い草のにおいと、土のにおいを浴びながら、うちは後ろによろけた。
「善人はさ、あたしみたいな悪人と、いっしょにいないほうがいいよ」
イラスト:ノーコピーライトガールさま