あらすじ
ようこそ、とばりが丘団地へ。アタシはこの団地の大家だよ。早速この団地のご入居をお望みかい? 生憎古い団地だから、いい部屋は売れちゃってるけどね。……なんだ、入居希望者じゃないのかい。じゃあ、この団地の不思議な噂を聞きつけてやって来たクチかい? アンタも物好きだね。
アタシも長い間団地の大家やってるけどね、ここの連中は変わったヤツばかりだよ。すぐ出てくヤツもいれば、生まれてからずっと住んでいるヤツもいる。アタシはそんな住人達の与太話を聞くのが、一つの楽しみさ。今のご時世、外に出ることも禁じられて、これぐらいしか楽しみはないからね。アンタも知っている通り、ここは不思議な団地だ。変わった出来事なんてそこら辺に落ちてるさ。
さて、立ち話もなんだ。アタシの部屋に入って、少しお茶でもしようじゃないか。ちょうどこの団地の住人がくれた茶葉と、茶菓子がある。それをつまみに、面白い話でもしようかい。
とばりが丘団地には子供はあんまりいないんだ。この団地は一人暮らしの会社員が多いからね。家族連れはもっと広々とした田舎町に行くんだ。だから、団地に子供がいたら誰の家の子なのかすぐに分かるよ。中でも団地名物の悪ガキ集団には、いつも手を焼かされるよ。
ズク、マッキー、ヒロ、ケン。あの子達はそう呼ばれているね。この空気の澱んだご時世にマスクもせず、元気に外を駆け回ってるよ。なんでも団地の外の世界を見たいんだと。生まれてからずっとこの団地の中で生きてきたあの子達には、団地の中は窮屈だろうに。
そんな悪ガキ集団が、丸一日いなくなった時があったんだ。その日の団地はひどく静かだったよ。あの子達が帰ってくるまではね。