あらすじ
美大生の私は、卒業制作の題材を探す中で、古道具屋で一体の球体関節人形と出会った。白磁のような肌を持つその人形は、実物は無表情なのに、鏡に映る姿だけが微かに微笑んでいた。好奇心から人形を持ち帰りスケッチを始めると、夢の中で人形が囁き、鏡越しに存在感を示すようになる。調べを進めるうち、人形は亡き人形師が早くに亡くした妻を写して作った最後の作品であることが判明する。その微笑みは、愛と孤独の残滓――人形師の妻の想いそのものだった。
制作を重ねる中、鏡の向こうで人形の微笑みが鮮やかに現れ、私はその想いを受け止める。そして完成した作品は、展示会で人々の心を打ち、鏡の中の微笑みは静かに私の中で息づく――。鏡の向こうで微笑む存在と、心を通わせた少女の物語。切なさと温かさが交差する短編幻想譚。