あらすじ
戦後百周年。
日本は、外交を主体とする移民政策によって、不況へと陥っていた。
様々な思想が入り乱れ交錯する動乱の時代に、「阿州の鬼小町」と恐れられる町一番の喧嘩娘が居た。仙女の名は月岡愛鐘。
徳島県鳴門市に住む元氏族、月岡家の御令嬢だった。
甚だしいほどの美少女だが、その実態は到底その美貌には相応しくないものだった。
毎日毎日当然のように遅刻早退を繰り返し、挙げ句の果てに授業中は居眠り。放課後は他校の生徒と喧嘩三昧な日々を送る問題児だったのだ。
そんな彼女はある時、一人の少年と出会う。彼の名は唐沢癒雨。ただひたすらに強さを求める野心家で、愛鐘の生家、月岡家が管轄する撃剣道場「太陰館」に入門した。
共に道場で稽古に励む中、癒雨は師範代である愛鐘の強さに焦がれていく。
自身の強さを始めて容認してくれた癒雨は散々と畏怖の念を抱かれ否定されてきた愛鐘にとっては唯一無二の存在だった。
次第に癒雨へと惹かれていく愛鐘。
しかし、その束の間の憩いも数年と経たずに終わってしまう。
動乱の中、国民の主権が放棄された現状を良しと出来なかった癒雨は、外国人を排除しようとする思想––––〝攘夷〟を掲げ、問題となってしまう。
しかし、そこには彼なりの国を思う優しさがあり、正義があった。
彼の良心にやはり想いを膨らませる愛鐘は癒雨を引き留めようとするも、その時既に彼の背中はずっと遠かった。
道を違えた二人。
国民のために自身を尊ぶことなく攘夷を貫く癒雨と、そんな彼の幸せを願う愛鐘。
だが唐沢癒雨には、拭い切れない悲惨な過去があり、その劣悪な環境下で育ったが故の責任があった。
愛鐘は、そんな癒雨を呪縛から救いたいと懇願するも、世界は無慈悲にも酷な天災を彼女達に仕向ける。
––––南海トラフ巨大地震の発生である。
加えて、被災地に送られた愛鐘達を待っていたのは現国を覆さんとする人々の邪悪な願いによって生み出された禍いの化身。
彼らを相手に悉くを蹂躙されていく被災者たち。
死にたくないと願う中で、彼らは無意識的に自分たちを救済してくれる勇者を祈願した。その願いに、愛鐘やその同朋達が次々と神格化を遂げた。
圧倒的な力を有した愛鐘は、災禍の淵で今際の際を体験するも、間一髪で禍いを討ち祓う。
方や政府は、首都圏で組織化、肥大化していく、唐沢癒雨率いる攘夷一派を弾圧するための隠密部隊を結成。人員確保にあたり、日本各地から腕っぷしのある強者達へ任意協力の招集令状を贈った。
愛鐘はこれを、癒雨を救う絶好の機会とし、招集に応じた。
そうして、月岡愛鐘は、過激化する動乱の渦に身を投じていく事となる––––。