あらすじ
『歪なる理(ことわり)の物語』
ラノベ好きの平凡な青年「りく」が目を覚ましたのは、蒸気機関車が煙を上げ、瓦斯灯が夜を照らす大正浪漫風の帝都。ありきたりな異世界転生、手にしたのは「空間を少しだけ歪ませる」という、お世辞にも強力とは言えない地味な能力だった 。
「思い通りにならないこと」こそが基本法則の世界で、彼は太陽のような快活な呪術師の少女と出会い、前途多難な冒険者稼業を始める 。誇り高き義賊、寡黙な剣豪、掟に生きる忍び、孤高の陰陽師、自己犠牲を宿命とする巫女、復讐に燃える鬼の少女、戒律に揺れる拳僧、そして死者の声を聞く孤独な渡し守―― 。
傷つき、すれ違いながらも、いつしかかけがえのない仲間たちとの間に固い絆を結び、彼は帝都を揺るがす数々の事件を解決していく。
しかし、それは単なる英雄譚ではなかった。
守るべきものを守れなかった時、抑えきれぬ怒りが彼の力を暴走させ、英雄を破壊の神へと変貌させてしまう 。仲間たちにさえ恐怖を与え、その力の代償として心を砕かれた彼が知ったのは、あまりにも残酷な世界の真実。
本当の敵は、魔王ではなかった。
この世界は、神を名乗るもう一人の転生者が脚本を綴る、壮大な「物語」の舞台に過ぎなかったのだ 。仲間との出会いも、死闘も、全ては彼を「主人公」として成長させるための筋書き。そして、その脚本が用意した結末は、最愛の人との永遠の別離という、絶対的な悲劇だった 。
神が描いた筋書きに、登場人物が抗う術はあるのか。
全てを失った主人公が、悪魔との共犯関係という禁断の切り札を手に、脚本(うんめい)に抗う。これは、世界を救う物語ではない。たった一人の愛しい人を取り戻すため、神が創った完璧な悲劇(ハッピーエンド)を、不完全で温かい奇跡(おれたちののぞむけつまつ)に書き換える、復讐の物語。
生涯で一本の物語に出会いたいあなたへ。絶望の底から始まる、最高の異世界叙事詩が、今、幕を開ける。